鳥羽図鑑

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江戸川乱歩【えどがわ・らんぽ】

 「同じM県に住んでいる人でも、多くは気づかないでいるかもしれません。I湾が太平洋へ出ようとする、S郡の南端に、ほかの島々から飛び離れて、ちょうど緑色の饅頭をふせたような、直径二里たらずの小島が浮かんでいるのです」。

乱歩の代表作のひとつ『パノラマ島奇談』の書き出しだ。M県は三重県、I湾は伊勢湾、S郡とは鳥羽を含めたかつての志摩郡だといわれている。

三重県名張市に生まれた乱歩は大正5年から1年ほど、鳥羽市の造船所で働いた。後に妻となる、鳥羽の離島坂手島で暮らす隆と出会ったのもこのときだ。

奇怪、幻想に満ちた『パノラマ島奇談』は、巨額の富を得た男が小さな島に夢想郷をつくるという物語。奇々怪々なこの島が、鳥羽の離島なのかどうかは謎だが、乱歩の不思議な世界に浸れる施設が鳥羽の町にある「鳥羽みなとまち文学館」だ。

乱歩と親交のあった民俗学者岩田準一の生家を利用した文学館は、竹久夢二も含むこの3人の業績や作品を紹介。薄暗い蔵の中では乱歩の怪しげな世界をたっぷりと堪能できる。

文学館の辺りには乱歩が座禅を組んだとされる光岳寺などもあり、歩くにもちょうど良い。

乱歩と鳥羽の関わりを音楽と朗読で体感してもらおうと、2013年からは「乱歩ナイト」と題した催しを年1回開いており、ゾクゾクする乱歩の文学の世界に身を置くことができる。