鳥羽図鑑

hachiman

八幡神社 八幡まつり【はちまんじんじゃ・はちまんまつり】

答志町

「ウオーッ、ウオーッ」。男たちの叫び声が上がる中、担架のように組まれた台の上に黒い墨の塊をのせた「お的(まと)」が、細い路地を勢い良く掛け上がってきた。道の両脇に集まった男たちが一斉にお的に飛びかかり、墨を奪い合うと、高揚した空気は最高潮に達する。
 毎年2月の旧正月に執り行われる八幡祭りのひとコマ。島の人たちはこの祭りを「神祭(じんさい)」と呼ぶ。答志地区で最も盛大な祭りだ。
 奪い合った墨は家々に持ち帰り、戸口や雨戸などに○八と書く。島を歩いていると、至る所で目にする八を〇で囲んだ印がこれ。墨を奪い合うのは血気盛んな青年たちの役目だ。
 祭りはといえば、「じんじの舞台」と呼ばれる祭り専用の特設舞台で、この日の為に練習を重ねた島民による地芝居や歌や踊りが披露される。
 神祭の期間は凡そ1週間。毎年祭りが近づくと、答志地区の人々は準備に稽古にと大忙し。祭りの間は、島の人にとって大事な生業である漁さえも休みになる。
 老いも若きも男も女も、神祭に集い、新しい1年の安全と豊漁を祈願する。神祭という1つの舞台で島の人々は結束を確認し、更に強めていく。日本各地で失われつつある、祭り本来の意味が垣間見えるようだ。